天下一品とゴーゴーカレー@東京
「師匠、新宿に来たであります」
「よろしい、西口から改札を出て、高速バスターミナルの方に向かうのだ」
...
「高速バスターミナルの上に出ました」
「何が見える?」
「見渡す限りのヨドバシカメラが見えます。これ、全部カメラ屋さんなんでしょうか?」
「カメラも扱ってるけど家電、パソコンなど無節操に扱ってる。気にせずにヨドバシの裏手に回ってみよう」
「了解しました」
...
「2つ通りを通り過ぎました。GPSとGoogleMAPSではこのへんなんですけど」
「歩いて探そう。あと、GoogleMAPSは当てにするな」
「了解しました」
...
「見つけました! 天下一品です!」
「よし、中にはいるんだ」
「メニューがたくさんあります」
「騙されちゃいけないぞ。『こってり』だ」
「『こってり一丁入りました』と大声で連絡されました。恥ずかしいです」
「堂々としてろ。いかにも常連のように振る舞うのだ」
「この赤黒いトッピングは…?」
「にんにく唐辛子味噌だ。最初から入れてもいいがまずは一口味わってからのほうがより楽しめるぞ」
「どんぶりがきました」
「まずはスープを飲むのだ」
「…ん! 日清食品のラーメンとは違ったドロット感があります」
「うまいか?」
「美味しいです」
「次は麺をすするのだ。この日のために箸の使い方練習してきたんだろう?」
「任せてください」
...(3分経過)
「どうした?」
「はっ、すみません。我を忘れてしまいました」
「うまいか?」
「どうして今までこれを食べてこなかったのか後悔しています」
「まぁ、宇宙食にはならないからなぁ。そろそろにんにく辛子味噌を入れてみてもいいな」
「どういうトッピングなんですか?」
「にんにくと唐辛子と味噌だ。そのまんまだな。スープがさらにドロッとするぞ」
「なんと…やってみます」
...(5分経過)
「話している場合じゃないみたいだな」
「すごいです。あっという間にスープがなくなります」
「よし、スープまで全部飲んでしまうと次に差し支えるので気をつけよう」
「次?」
「せっかく新宿まで出たんだ。ゴーゴーカレーにはしごしよう。CoCo壱番屋はどこでも食べられるからな」
「ううう、スープがもったいない」
「我慢するのも味の道だ。レシートを持ってレジに行き給え」
「私のレシートは…見つけました」
...
「ゴーゴーカレーは西口商店街の南の外れにある」
「GoogleMAPSでもきちんと抑えてます」
「雑居ビルの地下にある。割引券を店の前で配っているのでもらうのを忘れるな」
「わかりました」
...
「トッピング無料券をもらいました」
「それはラッキーだ。迷わず「カツカレー」を頼むんだ。食券を買って店の中に入れ」
「トップングにカツですね」
「そうだ」
「カツってなんですか?」
「豚肉を油で揚げたものだ」
「油で揚げる…?」
「料理の説明は難しいな…。まぁ、実物を見たほうが早いか」
「早速きました。この、表面がぼそぼそしたのがカツですね」
「ご飯の上にカツを載せてカレーを掛けて食べるんだ」
「あごが外れちゃいます」
「じゃあ、カツの上にカレーをかけて食べてからご飯だけを後で掬って食べるんだ」
「これは」
「どうした?」
「さっきのにんにく辛子味噌とは違う辛さですね」
「うまいか?」
「美味しいです」
「日本全国、どこに行ってもカレーといえばこの味だ」
「特別なものじゃないんですね」
「子供の好きなメニューの一二を争うのがこのカレーだ」
「参考までに争ってる他のメニューは?」
「ハンバーグ。ドイツ人が持ってきたのを食べたことがあるだろう?」
「あー、あれも美味しかったですね。でも、天下一品ほどじゃないかなー」
「よっぽど気に入ったんだな。気に入ってもらえて何よりだ」
(以下、「Spring8の食べある記」より抜粋)
ラーメンとカレーライスは日本人のソールフードらしい。
ラーメンは宇宙食仕様のスープがドロッとしたものしか食べられず、カレーに至っては「ご飯にかけて食べる」という基本を経験してこなかった私にとって、「天下一品」のラーメンはカルチャーショックだった。こってりしたスープの中に宇宙があるかのように深い味わい。トッピングににんにく唐辛子味噌を入れるとえも言われぬ味わいになるスープ。スープをよく吸い込む細麺。
一言で言えば「絶品」だった。天下一品はまた食べたい。食べるなら「こってり」を。間違っても「あっさり」でも「元祖」でもない。
カレーはどこで食べても美味しい。ゴーゴーカレーやCoCo壱番屋のようなチェーン店から街の定食屋まで味は微妙に違っても通底するソールは感じられる。
一流ホテルでの気取ったメニュー(寿司や天ぷらなどが出た)よりも、私の日本はラーメンとカレーであった。地理に明るくない私をナビしてくれたJaxaの職員に感謝する。