キムチ
「師匠、師匠」
「どうしたねSpring8」
「ソウルにつく前にキムチ食べちゃいました」
「ほう、そりゃすごい」
「宇宙食のキムチよりも辛くて酸っぱかったです」
「うまかったか?」
「それはもう。宇宙食のキムチが中途半端なものだということもわかりました」
「衛生基準違うからなぁ。Spring8はどこで食べた?」
「ソウルに向かう客船のメニューにあったのでそれだけでも先にと」
「コック長、いいセンスしてるな。地球の旅は食べ歩きの旅だから本場につく前に味に慣れさせるのは常套手段だ」
「フレンチの途中で急に出てきたのでびっくりしました」
「無国籍料理だな」
「これなら明日の会食も期待できます」
「行った先のシェフが西洋料理にかぶれてないことを祈るよ」
「あと、明日の昼食は石焼ビビンバになることが正式に決定しました」
「良かったじゃないか」
「石焼ビビンバの作法をよく知らないので、今から練習しているところです」
「豆板醤をたっぷりかけて石鍋の内側にじっくり押し付けるのを忘れるな。パリパリになったところを食べるんだ」
「わかりました。ご飯と調味料を内側から押し付けるんですね」
「あれもうまいぞ。日本のもんじゃ焼きみたいなものだ」
「もんじゃ焼きってなんですか?」
「ええと…説明がしづらいな。小麦粉とキャベツを土手から引き出して食べるものなんだが」
「どういうものだかさっぱりわかりません」
「まあいい。今度日本に来たとき月島で腹いっぱい食べさせてやる」
「とりあえず明日の昼食が楽しみです」
「期待していいぞ」
「はい、期待しながら寝ます」