天下一品と二郎
「日清のこれは確かにうまい。でもこれに気に入ったのならハルは地上に降りたら行かなくてはならないところが2カ所ある」
「2カ所ですか師匠」
「そう。まずは天下一品。チェーン店だからあちこちにある。そこでこってりを頼むのだ」
「こってりですね」
「間違ってもあっさりじゃないぞ。そしてもう一つ、東京の桜田通り沿いにあるラーメン二郎だ」
「桜田通り……」
「ニンニク入れますか? と聞かれたら毅然と入れますと答える」
「ニンニク」
「この2件で日本人がなぜラーメンにあんなにこだわっているのか判るはずだ」
「カップヌードルよりおいしいラーメンがこの世にある……」
「カップヌードルはうまい。でも、これだけじゃないんだ。日本人のソールフードだな、ラーメンは」
「他にはないんですか?」
「ソウルフードとしてはカレーライスがある」
「インドの人がたまに持ってきてくれるあれ……?」
「近いがちょっと違う。イギリス領インドだったときにブイヨンをベースにしたカレーが海軍で出されてたのを日本人がアレンジした物だ。ライスに掛けて食べる」
「ライスに……掛ける?」
「無重力生まれのハルにはちょっと判らないか」
「すみません」
「これは簡単に神髄が判る。CoCo壱番屋かゴーゴーカレーなんかのカレーのチェーン店に行ってスタンダードなカレーを食べればそれで十分だ」
「どこも味が同じなんですか?」
「いや、味は店によって異なる。でもソウルは共有されてる。だからソウルフードなんだよ」
「ソウルフード……」
「どうだ、東京いってみたくなったか?」
「東京で食べ歩きたいです」
「東京は旨いところは旨いぞ。事前にチェックしておくのがおすすめだ」
「とりあえず天下一品と二郎は覚えました」
「十分だ」