Florian's most newest Diary

ふろりあんの再最新日記

ハーモニー

面白かった。

きちんとSFしてて原作からのテーマの逸脱もなかった。非常にわかっている人が脚本を書いてるのが見えて好感触。

絵作りも「明らかにこれ3DCGIじゃないと辻褄が合わない」という絵とセル塗りが混在していてシームレスにつながってるのは面白かった。やるな、Studio4℃CGI側の人が共同監督になってるのも効いてるんだろうな。「ただ食事するだけのシーンをズームしながら回りこむ」という豪華さが凄い。いや、重要なシーンなんだけど。

CGIとアニメの両方に興味がある人はあの絵作りだけでも見ておくことおすすめ。「楽園追放」とは違った意味で3DCGIの有効な使い方。原画を割っているところもたくさんあるんだけど。っていうか、監督自ら原画書いてる。

 もうネタバレいいかな。

たいそう概念的なSFなので、言葉で説明しないと何も伝わらないというのはあるんだけど、色んな所を言葉で説明していたのが気になった。セリフじゃなくて「言葉」ね。拡張現実やヴァーチャルチャットのシーンや、あのラストシーン(なぜ「さようなら、わたし」なのか、とか)追いかけるのに必死で凄い疲れる映画だった。

ミァハが殺された時点でハーモニーシステムは起動してしまい、世界は平和(で、退屈)になったというあのラストをどれくらいの人が理解できたんだろう。わたしは絶望的な気分で緑になっていく世界を眺めてたけど、あれは画面の隅々まで追いかけてないとわからないよなぁ。経過時間とか色々書いてあったんだけど。

原作からのイメージとして前半はばっさりカットされて後半を重点的に書いてるように思えるけど、あの作りは非常にうまく行ってる。キアンの自殺シーンが凄い冒頭に語られるので、ロードムービーとしてトァンの足取りを追いかける作りはうまい。

同じロードムービーでも「こんな話だったっけ?」と疑問を抱く「屍者の帝国」よりも「そう、このテーマのために旅をしてるんだ」という印象が強い「ハーモニー」のほうが映画としてよく出来てます。

 

世界観デザイン、メカデザイン、プロップデザインの隅々まで「なかむらたかし」節が細かく入っているのも面白かったです。冒頭の四脚走行車からドローン、都市内のコミューター、遠距離旅客機(ジェットやプロペラですらない! 長大な螺旋と羽ばたきで推進力を得ている)まで。拡張現実に記される様々なデータやUIも、専門の人がやっているのがわかって好印象。そうそう、こういうところで手を抜くと醒めるんだよね。

タイトルに「ハーモニー」という言葉はどこにも使われてなくて、作内でのタイトルは「<harmony/>」。XML風のネストしないタグ打ちがいかしてます。だから最後の「制作」のところは「</Studio 4℃>」と閉じタグ。そう来るか。

色んな意味でSFをわかっている人が大筋を作って、現代からの類推できる社会や科学技術を使って(巨大建築物がどこの都市に行っても似たようなデザインになってるのはUAEとかの都市を研究したんだろうな。なんか専門家っぽい人もスタッフロールにいたし)SFでなくては表現できないテーマを書くという見事なまでによく出来たSF映画でした。

SFマニアにはおすすめです。それにしては女性が客に多かったけど。平日の昼間2時なのに7割方席が埋まってました。結構大きなスクリーンだったので人数は割と多いんじゃないかと。