伝説のスタ丼
「東京には『伝説のスタ丼』があるらしいな」
「何をヤブから棒に」
「いったいどんな食べ物か教え給え」
「牛丼の上に生卵が載ってるようなメニューだよ」
「それが伝説か」
「伝説だけど…」
「納得いかーん」
「だってこうだよ」
「もうちょっと何か『伝説』になうような要素はないのか」
「ないんじゃないかなー」
「だって、あの宇宙小学生Spring8が行きそびれた店だぞ。何かありそうじゃないか」
「そう思うんなら一旦仕事切り上げて帰京すればいいじゃないか。どうせ制限期間超えて働いでるんでしょ?」
「だっておかしい。天下一品->ゴーゴーカレー->だるまのめときて次に行きたがるのが「すた丼」と「ステーキの神様ル・モンド」という選択肢なんだから何かがあると考えるのが普通じゃないか。ル・モンドが美味しいのは判る。『スタ丼』は何があるんだ」
「外から見て活気があるなー、っていう判断基準じゃない?」
「そう…か」
「で、帰ってこられそう?」
「インターンをまた押し付けられた」
「前の彼女は?」
「まだインターンやってる。ポスト・ドクターってやつだな。今はいきなり声優声で日本語で話しかけられる回数は減ってる」
「インターンは優秀?」
「ま、ぼちぼちだな。ウィッチドクターの腕にはなかなか追いつけない」
「そこを伝えないといつまでも拘束され続けるよ」
「わかっちゃいるんだけどねー。この数年で会得した技術を全部伝えるのは難しくて…」
「帰ってきたところですぐにSkypeで捕まるのが目に見えてるのか」
「そう」
「そこまでわかってるんなら帰国しちゃえばいいじゃん。日本にいる限りどこでもIP-reachableなんだし、Skypeなんか立ち上げっぱなしでいいと思うけど」
「IP-reachableってほんと?」
「NATとか駆使してスマートフォンの殆どはIP-reachableだね」
「そうか…そうだよな。スマートフォンなんだから当然か」
「よし、一旦帰る方向で話を進めよう」
「あー、もしかして」
「もしかしなくても伝説のスタ丼だ」
「水刺すようで悪いけど、ほんとに牛丼に卵が載ってるだけのメニューだからね。ル・モンド行ったほうが満足度が高いよ」
「Spring8の敵を打ってやる」
「あーはいはい。好きにしな」