オープンエデュケーションと未来の学びWeek4のレポート
もう締め切りすぎてるから公開しても大丈夫かな。
- 課題内容
最終レポートでは、オープンエデュケーションが広まる世界に生きるある架空の人物のストーリーを想像し、その人生にオープンエデュケーションがどのように 関わっていくかを書いて頂きます。自分とは異なる主人公を設定し、その主人公が何らかのオープンエデュケーションのサービスを使い、そこで得た学びが主人 公の人生を良くするストーリーを書いて下さい。字数制限は800字以内とします。
- 提出したもの
21世紀初頭、ベトナム。教育改革の国家的戦略として初等教育に導入された国際NGO「OLPC」の電子教科書は瞬く間に国中の小学生の必需品となった。
小学校に設置されたスクールサーバーは充電用の電気の供給と衛星回線による高速無線インターネットを提供し、全ての小学生に国費で配られたOLPCの標準ラップトップコンピュータ「XO-3」は自律通信網を田舎の農村にまで広げた。
ベトナムのIT革命は大多数の大人のあずかり知らないところで確実に根を張っていった。
ハノイの南、農業以外で生計を立てる術のない小さな農村、ククフォン村。ド・ヴォ・クォンはククフォン村で米を作る農家の次男坊だった。午前中は村に一軒しかない小学校に通い、午後は夜までXO-3を学校(=スクールサーバーの近く)で使い世界に繋げる。
電子教科書は学年や年齢の差を飛び越えてクォンに知識を与えた。
次第にインターネットの雑多な情報よりもXO-3の内部構造に興味を抱いたクォンはXO-3に使われているOS、Linuxの核(カーネル)の部分を開発しているメーリングリストに登録し、実地で英語を覚えていった。
MIT(マサチューセッツ工科大学)の授業配信システムMITオープンコースウェアは世界に全ての授業を公開しているMOOCのひとつだ。
MITの職員はある日細いインターネットの回線から猛烈な勢いで授業を履修していくユーザーに気づいた。gmailのフリーアドレスを使っていたため、当初、アジアかアフリカの業者がコンテンツを取りに来ているのだろうと管理者側は静観していたが(実際そういう件はたくさんあった。無料の教育コンテンツに価格をつけて売ろうという業者は新興国のビジネスモデルとして確立していた)、ある日、そのユーザーが講義の内容の間違いについてディスカッションで指摘するに至ってユーザーの人格の存在に気づく。
「どこから来てるの?」
「ベトナム」
「歳は?」
「11」
MITのスタッフは色めき立った。優秀な学生はどの大学でも喉から手が出るほど欲しかった。また、MITオープンコースウェアの存在理由のひとつとして優秀な学生のリクルートが掲げられているが、実際にはそこまで件数が多いわけではないのでMIT内のMITオープンコースウェアの政治的位置は微妙だった。MITオープンコースウェアが存続しつづけるためには定期的な学生の取得が必須だった。
「国に働きかけるから、奨学生としてMITに来ない?」
そのユーザー(=クォン)は少しためらってから応えた。
「奨学金はいらない。ただ、取った単位をハノイ工科大学に充当してくれると嬉しい」
その頃クォンはハノイ工科大学の学生の間ではちょっと有名な存在になっていた。小学生がLinuxのカーネルハッカーをやっているのはIT革命が進んでいたベトナムの子ども社会の中でも珍しかったので母国語でかわいがられていた。
MITのスタッフが懸命に説得してもクォンの意志は固かった。最後にはMIT側が折れて奨学金は無しで単位だけを無償でハノイ工科大学に充当することになった。当時小学5年生だったクォンは中学と高校を入学試験と卒業試験を同時に受けるという荒技で飛び級し(知識に貪欲だったクォンにとってこの程度の試験は余裕だった)、12歳にしてハノイ工科大学に入る。
クォンは晴れて大学のカーネルハッカーの巣窟である研究室に配属された。
クォンは英語の文法はメーリングリストで覚えたが、ヒヤリングはMITxで初めて実物に触れたので初めのうちは苦労したと研究室の仲間に語ったが、農家の次男坊の小学生とって時間は腐るほどあったのでひたすら耳を慣らすことで徐々にできるようになったとも同時に触れた。
IT革命とMOOCが新興国に影響を与えた例はこれだけではなかった。少なくともMITが調べたところ、OLPCが教育に導入されている新興国からMITオープンコースウェアにアクセスした例は多数あった。そのほとんどが、英語を非ネイティブとして扱う小学生だったという。
- 解説
全然800字に収まってない。無駄にドラマチック。MITオープンコースウェアは正確にはMOOCじゃない(らしい。見返したけどよく判らなかった)。
フィクション概ねです。現実世界のヴェトナムはOLPCを導入してないし、XO-3はプロダクションモデルじゃない(XO-4が最新のプロダクションモデルみたい)、MITが調べたところという最後の落ちは完全に創作。ハノイ工科大学の情報工学科にカーネルハッカーの巣窟があるかは結局調べきれませんでした。
MOOCとOLPCプロジェクトで世界は変わるよねということだけが言いたかったストーリーです。
元ネタになった短編小説「ハノイのハッカー」を書いた時にはまだMOOCの事を知らなかったのでMOOCでOSの授業を取るというネタは入っていません。ブログではちょっと書きましたね。