Florian's most newest Diary

ふろりあんの再最新日記

フェアリーテイル・レクイエム/LiarSoft

総評。

(種明かしあります)

 

 

面白かったです。ファンタジー、というかメルヘンに抵抗がない人なら是非。とびっきりのメルヘンとビターな大人の事情(作ってる人たちではなく、作内の大人)が味わえます。

「楽園」の基本構造は割とプレイ冒頭で明かされるのでそんなに肩に力を入れなくても十分楽しめます。各ヒロインについても、共同幻想を一緒に見られるような作りになっているのでエンディング自体には納得がいきます。ヒロインごとにバッドエンドとグッドエンドがあるという非常にシンプルな作り(また選択肢がわかりやすい)なので全ルート見ようという向きにはかなり肩すかしな難易度です。

じゃあ短いかというとそんなこともなく、十分な時間をフルボイスで楽しめます。ヒロインズはともかく、イケノ先生だけはボイスが欲しかったなぁ(これはやればすぐに分かります。医療スタッフがこれ以上ないってぐらいアノニマスな作りになってるので。これは凄い上手い)。

エッチゲームではあるのですが、エッチシーンは基本的に傍観者です。まともにあったのラプンツェルぐらいかな? 「楽園」の中を監視しているカメラがプレイヤーの部屋に映しだされたり、話が主人公を離れて幕間になったり(タイトルロゴ前でも出てきた「テ」の文字がいやらしい。このアイディア考えたの誰だろ。大石さんかな?)。グレーテルはエッチシーンが原因で死んじゃうくらいのシビアさ。まあ、エロゲーだからエッチシーンはあって当然だし、「楽園」がああいう存在である以上、行為とそののぞき見はありうるべきものだし。でもドロシー、「もしも」の世界であそこまで見せることはないんじゃないのかね? と、お話に突っ込みはさておき。

現実世界に呪術的な魔法が染み出てくるストーリー展開はなかなか面白かったです。電波と言われれば電波。精神異常と言われれば精神異常には違いないのですが(一番正気に近いゲルダですら現実世界から見るとずっと精神異常)、ありえたはずの世界を幻視させたうえでありえない出来事を実際に起こすというのはファンタジーでは専売特許ですからね。各人が持っている「聖書」も話のじゃまにならない程度にあらすじになっていつでも読めるし。呪術的な世界は楽しいです。電波ゆんゆん

 

背景、キャラクターのテクスチャー(CG的な意味ではなく画学的な意味の)、キャラクターのストーリー的な造形、時折挟まれるイベントCGなど、「グラフィッカーとどういう打ち合わせをすればこんなものが出来上がるのか」とゲームクリエイターとしては思わず感嘆したくなるような各パーツも素敵です。「魔法少女まどか☆マギカ」の劇団イヌカレー以降の演出術の集大成と言ってもいいんじゃないかな。

作曲しているさっぽろももこさんは楽園のテーマと各キャラクターのテーマともう一曲プログレを作っている以外は関わってないようで、劇中の話が動くシーンはフリー素材から集められたようですがこの選択も凄い絶妙。演出がとてもうまいです。

ゲームとしてはかなり上出来の作品と言っていいと思います。

 

途中、白鳥の湖のオデットのエピソードに入る方法がわからず(6日目昼の庭園がキーだったとは! すっかり見落としてました)、なかなか種明かしのルートには入れませんでしたが、判ってみればシンプルですし、あそこのエピソードがなければ選択肢が生まれない理由もわかります。起こる出来事と、存在する選択肢に説得力があるというのはいいですね。買って真っ先にやるのはパッチを当てる作業でしょう。パッチを当てないとあの選択肢が伏線もなく出てしまうので。買ってきたらまずパッチを当てる。なんか、懐かしのLiarSoftが戻ってきたような感じです(腐り姫やねこねこマシン猛レースはひどかった)。

でも、あの障害物のせいでオデットの話が非常に印象的だったのは全体から見るとむしろ良かったことだと思います。

 

全体として素晴らしいゲームでした。ファンディスクがすぐに出るみたいですが、すぐに出るくらい売れてたんでしょうか。だとすればこの素晴らしいゲームが埋もれて無くて非常に嬉しいです。

良いゲームは売れてこそですからねぇ。